Special

島﨑信長さま&羽多野渉さま オフィシャル対談

SPECIAL02

――最初に原作を読まれたときの印象をお聞かせください。

羽多野想像しただけでも怖い現象が描かれているんですが、ヤマシタトモコ先生のタッチがそれをより怖く感じさせている気がしました。それと、特別な力を持っていて視える人の中でもハッキリ視える人、おぼろげに視える人、感じられるだけの人がいるという設定がすごくリアルに感じましたね。

島﨑そう、リアルなんですよ! 「本当に霊が居そうだな」と思わされるところが、この作品の面白いところだと思います。ホラーというとパニック、ショック、絶叫みたいなものをイメージされる人も多いと思うんですが、『さんかく窓の外側は夜』は当たり前にそこに居るというか、日常の裏側に……もしかしたら裏でもなくて表、同じ側にただ居る、そんな風に思わせる力があります。もしかしたら今もこの取材部屋の隅に居るのかも(笑)。

羽多野僕らが視えていないだけでね(笑)。

島﨑そう思わせてしまう、自然さが逆に怖いですよね。それにホラーな面だけじゃなくて、人間ドラマとしてもとってもリアルなんですよ。リアルな人間ドラマと、日常に寄り添うようなリアルなホラーが素敵に合わさって面白い作品になっているなと感じました。

羽多野不気味さの中に男性同士の友情や絆……愛情までいっているのかは分かりませんが、独特な関係値が描かれていて。そういったジャンルとホラーの相性がこんなにいいんだと初めて知りました! もともと不思議な現象やホラー作品などが好きなんですが、これはまた新しい切り口で面白いなと、時間を忘れて原作を読んじゃいましたね。

――“除霊が気持ちいい”という設定についてはどう思われましたか?

島﨑除霊シーンを初めてご覧になった皆さんはビックリされるかもしれないですが、意外とやっているほうは馴染んでしまったというか、そこに特に違和感や疑問を持つこともなくて(笑)。

羽多野何の違和感もなく、戸惑いもなく、自然な所作で演じていました(笑)。

島﨑除霊する際に魂と魂が触れ合うので気持ちよくなっちゃうんですけれど、魂ってある意味一番むき出しの、何のガードもない敏感な状態だと思うんです。それが触れ合うのだから、あんな反応になってもおかしくはないんじゃないかな。

羽多野生き死に関係なく、そこにこもっている強い思いが霊の正体みたいなところがあると思うんです。その強い思いを浄化するわけだから、何かしらのフィードバックがあってもおかしくはないし、それが冷川たちの場合は気持ちよくなっちゃうだけという話ですね(笑)。

――その気になる除霊シーンは、PVにもばっちり盛り込まれていましたね。

島﨑ホラーサスペンス、人間ドラマ、心霊探偵バディものといろいろな面がある中で、あえてそこをPVでガッツリ推してきましたね(笑)。

羽多野あれも『さんかく窓の外側は夜』の魅力の一つだもんね。直接的な表現があるわけじゃないし、めちゃくちゃオシャレに描かれているよね。魂だけがぐっちょんぐっちょんになっているだけで(笑)。

島﨑そうそう(笑)。だから初めてこの作品に触れる方で、PVを観てビックリしたとしても、安心して本編を観ていただけます!

――原作で一番怖いと感じたエピソードを教えてください。

羽多野僕はお母さんからもらった物に念がこもっていて、それに囚われている娘さんの話かな。

島﨑あ、僕もそのお話です!

羽多野生きている人の念が一番人を縛るし、そこに囚われた娘さんが長年にわたって悩んでいるのが非常にリアルだよね。言霊というように言葉は力を持っているので、親から躾を越えた言葉の暴力を幼い頃から受けていたら、きっと真っ直ぐには生きられないだろうなと、いろいろ想像してしまうお話だなと感じました。

島﨑旦那さんの態度も人間臭くてリアルでしたね。自分が三角たちを呼んだくせに文句をつけてくるし、問題を解消しても「おれの弱味握ったとか思って調子こくんじゃねーぞ」と吼えてくるし。それに対して三角が「おれに吼えてるより、もっとやるコトあんだろ。彼女が泣いてんじゃんかよ」と返すのも含めて、印象的な話でした。

――お二人が演じられる三角康介と冷川理人というキャラクターの印象をお聞かせください。

島﨑僕が演じる三角は普通の人には視えないものが視えて、怖い経験をしてきているのに、すごくニュートラルで目の前のことに真っ直ぐ向き合える人です。それはきっと三角のお母さんをはじめ、周りの人のおかげだと思うんですけれど。

羽多野うん、お母さんの育て方が素晴らしいよね。

島﨑よくあんな素直な子に育ったなと思います。怖いという感情を誤魔化したりせず、なんだかんだ向き合い続けているところが普通っぽいというか、視えるのに視えない人みたいなところを持っているんですよね。だから視えることで普通とはかけ離れてしまった冷川や非浦たちからは、すごく魅力的に見える人なんじゃないかなと思います。

羽多野冷川はあえて「こういうキャラだ」と記号的に捉えないようにしていました。というのも、第一話の収録で監督さんから「積極的に会話をしないで欲しい」と言われまして。物語を追っていただければ分かることですが、彼は非常に特殊な出自の人物で、現代社会で生活していながら使っている言語・言葉の本当の意味を知らず、みんなが使っているから自分も使っているくらいの感覚でコミュニケーションを取っています。価値観も常人とは違うので、「こういう人間だ」と決めつけず、誰とそこに居るかで全く性格が変わっちゃうぐらいの演じ方をさせてもらいました。ま、そういう意味では一緒に居て次に何を喋るか分からない、何が出てくるか分からない、そんな面白さが彼の魅力の一つかなと思います。

島﨑冷川に関しては、僕は捉える必要が無いので楽でしたね。三角としては「何だろう、この人」と思っていればいいので(笑)。それよりも演じられるほうが本当に難しそうでした。僕ら声優はちゃんと会話をして、言葉に説得力をのせることが仕事なのに、「会話をしないで」とか「説得力をのせ過ぎないように」といったディレクションが出るんですもん。

羽多野現場で一緒に録っていても「一緒に録っていない感じで」とも言われましたね(苦笑)。

島﨑でも、会話がまるっきりできていないわけじゃないんですよ。会話の大事な要点だけがちょっとずれていて、他の部分は成立していますから。

羽多野すごく勇気のいる表現でしたね。ともすれば、観た人に「見た目カッコいいキャラなのに、下手な声優だな」と思われて終わっちゃいますから。

島﨑ちゃんと芝居ができるからこそ、言葉の芯を取り除くという高度な引き算がなされているんですけれどね。「キャリア長いのにどうした?」じゃないんですよ、キャリアが長くないとできないことをやっているんです!!

羽多野放送中は信長くんにずっとフォローしてもらおう(笑)。

――迎 系多や非浦英莉可など、個性的なキャラクターも多く登場します。彼らの見どころをお教えください。

羽多野三角たちと同じように、迎と非浦は人には感じることのできないものを感じられますが、その能力の使い方がそれぞれ違うというか、対処の仕方が違うんですよね。たとえば迎は、霊現象を解決するのにとことん時間をかけて対話をする。そうしたところにそれぞれの性格が垣間見えて面白いと思います。

島﨑迎くんは年の功もあるんじゃないですか。見た目は若いですけれど、実は冷川たちより年上ですし。非浦はまず登場シーンが衝撃的ですよね。

羽多野あの登場の仕方は怖いし、最初は「どんな悪い奴なんだろう」と思っちゃうよね。

島﨑でも、そこは『さんかく窓の外側は夜』で、やっぱり彼女も人間なんですよね。後々、何でそうしたのか、どういう人なのかもきちんと分かります。他の登場人物は社会人として独立しているので、非浦は若さも感じましたね。両親の庇護下にある学生で、まだ大人の手を必要としている感じというか、気丈にピンと立っていてもどこか危うい感じがあって。で、そこを逆木(一臣)か支えてくれる。

羽多野逆木がカッコよすぎるんだよな~! そもそもカッコいいキャラなのに、諏訪部(順一)さんが演じられているから余計にカッコいいんですよ。PVも「お嬢さん」の一言で全部持っていっちゃう。諏訪部さんに「お嬢さん」って言わせたらそりゃカッコいいに決まってるじゃん!(笑)

島﨑しかも執事みたいにかしずく感じではなくて、ちょっとアウトローでワイルドなところがいい!

羽多野それと半澤(日路輝)さんもいいよね。これだけ霊や呪いが出てくる中で、信じていない人には効かない、その信じていない力が最強という表現は秀逸だなと思いました。

島﨑単に信じていないだけではなくて、一本筋の通った半澤さんの意思力があってこその“最強”ですよね。で、そんな半澤さんが何かしらあって揺らぐときがまたいいんですよ~!

羽多野強い人間の弱い面ってたまらないよね。半澤さんは冷川との関係も注目していただければ嬉しいです。後々ジャブが効いてきますから!

――冷川が三角と“運命の出会い”を果たしたように、お二人は“運命”を感じた瞬間はありますか?

羽多野運命って細かいことの積み重ねで、偶然ではなくて全てが必然というイメージがあります。だから常に運命を感じていますね。

島﨑結局は良いことも悪いことも、自分の行動の積み重ねですよね。たとえば新たに役が決まったけれど、実はその前に落ちたオーディションに受かっていたら、スケジュールが取れなくてその役を受けることができなかったとか、遡っていくと全部そういう理由があると思うんですよ。

羽多野因果があるんだよね。

島﨑そうそう。もう少し歳を取れば変わってくるかもしれませんけれど、今のところ「自分の行動で何とかなっていくんじゃないかな」と思うから、羽多野さんとは逆で僕はあまり運命を感じないかもしれないです。

――本作は霊が視える・祓えるといった特別な力を持ったキャラクターたちが登場します。お二人が何以下特別な力を手に入れるとしたら、どのような力がほしいですか?

島﨑「運がいい」能力です!
「運がいい」といっても、クジで特賞は当たらないけれどちょっと嬉しい2等が出るくらいの、行き過ぎないラッキーがいいですね。それくらいの力が一番幸せに生きられるんじゃないかと思います。

羽多野僕は肉体を強化する能力。デフォルトで身体が弱いので、病を跳ね除けるようなバフをかけられたらいいな。

島﨑健康は大事ですもんね。

羽多野働けますからね。

――凸凹心霊バディの三角と冷川のように、お二人が登場キャラクターの誰かとバディを組むとしたら?

羽多野冷川は嫌だなぁ~(笑)。

島﨑冷川と一緒に何かをやるビジョンは……運命じゃないと無理かな(笑)。

羽多野迎と組んで占い系YouTuberやろうかな。「迎えに行ってもいいですか」みたいなチャンネルタイトルにしてさ。

島﨑僕もバディ組むなら迎くんか三角かなぁ。ただ三角と組んでも、そんな特殊なものは生まれないと思うんですよ。三角は相方がとんでもなくぶっ飛んでいてちょうどいい人なので……そうなると迎くん一択ですね。でも、バディより同じ占い師になって顧客数を競ってみたいですね。

羽多野高め合って看板占い師目指すんだ?(笑)

島﨑ちょっと面白そうですよね。迎くんの占い術って、必ずしも霊能力を使うわけではなくて、カウンセリングみたいな部分もあるじゃないですか。あれだったら僕も勉強したらできそうなので、やってみたいです。

――放送を楽しみにしている方へメッセージをお願いします。

島﨑この『さんかく窓の外側は夜』は、人と人が出会い、さまざまな経験をすることでの変化、成長、関係性といったものが、段階を経てきちんと積み重ねられていく作品です。声の芝居をさせていただく僕たちも、より深いものを求められてとてもやりがいを感じました。観ていただければ、きっと僕たちと同じかそれ以上にお話にのめり込んでいただけると思います。最後まで観ることでいろいろなことが繋がりますので、ぜひ余すことなく最初から最後まで見届けていただけたら嬉しいです!

羽多野ホラーサスペンスというでなく、友情や親子の愛情など、本当にいろいろな要素が散りばめられています。それを通して伝えたいメッセージがたくさん込められている作品なので、ぜひ最後まで観ていただきたいです。1話ごとに起承転結があってエピソードとしては完結していますが、信長くんが言ったように全体で観ていただけると序盤の伏線が後半で効いてきたりもしますし、登場人物の変化していく様も楽しんでいただけると思います。

Back